ご存知ですか?

 

このたどたどしい文字で書かれたはがきは、自主夜間中学の生徒さんからいただいた私の宝物だ。戦争や家庭の事情によって学ぶ機会を奪われてきた年配の生徒さんが、70才を過ぎて、「あいうえお」から学び、生まれて初めて書いた手紙や年賀状。ここに至る長い道のりと、文字を獲得するまでの努力を思うと胸が痛む。

  みなさんは「夜間中学」をご存知だろうか? 公立の夜間中学がない札幌では、ボランティアスタッフで運営する自主夜間中学が1990年にでき、様々な理由で義務教育を十分に受けられなかった400人以上が学んできた。現在も地下鉄西28丁目駅のすぐ横にある中学校の教室で、毎週水曜日の夜、55人の生徒と80人のスタッフが励まし、支え合いながら学んでいる。生徒さんの年代は20代から90代後半と幅広い。
学校にほとんど通ったことのない人、外国から来た人、形式的には小中学校を卒業していても、生活上で不便を感じ、学び直しにやって来る若者など、多様な文化をもつ人々が、一緒に学ぶ空間は豊かで温かい。立ち上げから係わってきた私は今年で28年目になるが、仕事でどんなに疲れていても、教室に入り、生徒さんの笑顔に触れるとたちまち元気になる。北祐会の仕事を長く続けてこられたのは、心癒されるこの場所のおかげかもしれない。

 識字率が100%に近いと思われている日本社会だが、実は読み書きが不自由な人が大勢いる。そしてその方々が、いちばん不安を感じる場所というのが「病院」だ。問診票や検査の説明書など、難しい言葉や漢字が多く、ほとんどルビはふられていない。アルファベットを学んだことのない年配者にとっては、CTやMRIと言われても、読めないしわからない。はずかしくて字が書けないと言えず、病院に行く時はいつも手に包帯を巻き、字を書いてもらっていたという話を何度も聞いた。検査の説明書を持って来て、何が書いてあるのか教えてほしいと頼まれることもある。少しでも不安を取り除くために、問診票や薬の説明書などを国語の教材として使っている。北祐会に通う患者さんの中にも、夜間中学で学んでいた人が何人もいた。

読み書きが不自由な人がいるということを是非知っておいてほしい。北祐会が少数者にとって優しい場所であるために。

                                      H.Y.

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