ALSの呼吸困難にどう対応するか

2017年9月17日から9月21日まで,京都で開催された第58回日本神経学会/XXIII World Congress of Neurologyに参加してきました.久しぶりに英語三昧の5日間でした.ALSのケアに関して,自分達のやっていることは,日本はもちろん世界でもトップレベルであることを確認しました.これからも一層努力していこうと思います.

学会会場で,分担執筆した「神経内科 Clinical Question & Perals 運動ニューロン疾患」が,先行発売されていました.昨年の秋に,東北大学神経内科の青木正志教授から執筆依頼があったものです.私に与えられたテーマは,「呼吸困難にはどうのように対応しますか?」というなかなか難しい課題です.

ALSの呼吸困難の原因は,呼吸筋筋力低下によるものなので,基本的には,その治療法は人工呼吸器による呼吸補助です.それについて,ずっと以前から自分の専門の一つで,特にマスクを使った呼吸補助に関しては多くの経験を積んでいます.ただ,ALSは,進行するに従ってマスクでの補助が困難となり,気管切開による人工呼吸が必要になってしまいます.そこには,いろいろな問題があり,そのため呼吸困難に対する対応に関しては,緩和ケア的なアプローチも同時に知っておく必要があります.

ずっと以前に,日本緩和医療学会で,「ALSの呼吸困難にどう対応したら良いか」と質問したら,「がんが専門なので,ALSの事はわからない」と言われて,自分で切り拓いていかなければ駄目なんだと思い,ずっとやってきました.それなりの方法論はできましたが,いざそれを多くの人に書籍という形で提示するということになると,きちんとした裏付けなども必要になってきます.しかし,ALSの緩和ケアに関しては,依然として, まとまった書籍,論文は少なく,どうしてもがんの緩和ケアから,その考え方を援用してくる必要があります.ということで,今回,がんの緩和ケアについても勉強しなおしました.10年以上前,札幌医科大学神経内科在職中に呼吸困難に対するモルヒネの使用について調べたときには,「モルヒネは呼吸困難の軽減に有効な可能性がある」程度しか分かっていませんでしたが,現在は,がん患者の呼吸困難を軽減することが複数の無作為化比較試験で示されているだけでなく,疾患に関わらず進行性疾患に伴う呼吸困難に有効であるという報告もでています.しかし,がん以外の疾患における知見は,未だに不十分なのが現状です.

ALSにおいて最も難しい問題について渾身の一章を書いたつもりです.よろしければ目を通して下さい.

Michio Nonaka