父の声

2~3歳の頃、私は絵本を読んでもらう事を日課としていたらしい。
仕事から帰っても家事に忙しい母にかわって、読み聞かせはもっぱら帰宅後の父の担当だった。
他にも絵本があるのに私はなぜか「3匹のこぶた」が大のお気に入りで、
『どのこぶたから食べてやろうか』とオオカミが陰から様子を伺う場面では、幼い私は父のあぐらの中で身を乗り出し、固唾を飲んでいたらしい。

毎日読んでもらって展開を知ってるはずなのに 毎回父の期待通りに私が前のめりになるので、父の迫真の演技にも磨きがかかっていったと母から聞いた。
今、父は進行性の神経難病になり治療の為に喉頭摘出術を受けたため、声を失った。
このページを見ると、「山の上からオオカミが、じっとこぶたたちの様子を見ています」という父の声を思い出す

吉田 陽子

看護部

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